トレーリングアップ機能は、市場価格の上昇に応じて現物取引ボットの取引レンジを自動的に上方へシフトさせる機能です。価格変動に動的に対応することで、従来のグリッド取引の大きな課題であった「設定したレンジを価格が突破すると利益が頭打ちになる」という問題を克服し、当初のグリッド範囲を超えてさらなる利益を狙えるようになります。
仕組み
市場価格が上限価格より1グリッド分上昇すると、トレーリングアップ機能が作動し、最も低い価格の買い注文をキャンセルして、以前の上限価格で新しい買い注文を出します。価格が新しい上限価格に価格間隔を加えた額をさらに超えて上昇し続けると、ボットはこのプロセスを繰り返し、取引レンジを1グリッド分ずつ引き上げ、市場の上昇トレンドに追従します。
以下の例を使って、その仕組みを具体的に見ていきましょう。
- 下限価格:25,000ドル
- 上限価格:30,000ドル
- 市場価格:26,500ドル
- グリッド数:5
- 価格間隔:1,000ドル
ボットは、設定された価格間隔に基づき、価格帯全体にわたって買い注文と売り注文を均等に配置します。
トレーリングアップが無効の場合
市場価格が上限価格(30,000ドル)を上回ると、価格がレンジ内に戻るまで、ボットは新規注文の発注を停止します。
トレーリングアップが有効の場合
市場価格が31,000ドル(上限価格 + 価格間隔)に達するか、それを超えると、ボットはレンジを1グリッド分引き上げます。具体的には、25,000ドルの最も低い買い注文をキャンセルし、30,000ドル(以前の上限価格)で新しい買い注文を出します。
価格がさらに上昇し、32,000ドル(31,000ドル + 1,000ドル)を超えると、ボットは再びレンジを上にシフトさせます。この時、新しいレンジは27,000ドルから32,000ドルになります。
この例では、取引レンジが2回シフトしたため、トレーリングアップの実行回数は2回となります。
注:
・トレーリングアップが機能するには、次の2つの条件を満たす必要があります:(1)グリッド数が5つ以上であること、(2)より高い価格で新規注文を出すための十分な利用可能残高があること。この残高には、蓄積されたグリッド利益と、キャンセルされた注文から解放された資金が含まれます。
・この機能は、相場が反転した際に高値で買ってしまう可能性があります。リスクをより効果的に管理するため、トレーリングストップ機能との併用をおすすめします。
動的注文メカニズム
Bybitの現物取引ボットでは、各グリッドで保有するベース資産(例:BTC/USDTの通貨ペアにおけるBTC)の数量は、価格に関わらず一定です。例えば、価格が30,000ドルでも35,000ドルでも、ボットは各グリッドで1 BTCを売買します。価格が上昇するにつれて、各グリッドの合計価値もそれに伴い増加します。
トレーリングアップによる調整中に新規注文を出すための資金が不足した場合、ボットは十分な資金が確保できるまで、現在の市場価格から最も離れた価格で発注されている注文を1つ以上キャンセルします。これを動的注文メカニズムと呼びます。このメカニズムは、市場の変化に応じて効果の低い注文から資金を解放することで、資本効率を向上させます。その結果、グリッド数は変動する可能性があり、当初のグリッド数と同じか、それよりも少なくなることがあります。
ただし、注文をキャンセルすることでグリッド数が5未満になる場合は、ボットは注文のキャンセルやトレーリングアップを行いません。代わりに、利用可能な資金が十分になるまで待機し、再度実行を試みます。
現物取引ボットでトレーリングアップを有効にする方法
ステップ1:Bybit取引ボットのページに移動し、「現物取引ボット」セクションで「作成」をクリックします。

ステップ2:「自動設定」または「手動設定」タブを選択します。「詳細設定(任意)」で、「トレーリングアップ」ボックスにチェックを入れ、必要に応じてトレーリングアップの上限価格を設定します。

注:トレーリングアップの上限価格とは、ボットがグリッドの上方修正を停止する価格のことです。これを設定しない場合、ボットは5つの注文を維持するための資金が不足するまでトレーリングアップを継続します。
ステップ3:残りの設定を通常通り行い、「今すぐ作成」をクリックします。
ステップ4:確認のポップアップ画面で、トレーリングアップのオプションを含むすべての設定を確認し、「確定」をクリックします。

当初の価格レンジと調整後のレンジ、および設定したトレーリングアップ上限価格を確認するには、「マイボットを見る」→「有効中」→「現物取引ボット」→「詳細」→「パラメータ」に移動します。必要に応じて、ここで設定を変更することも可能です。
